今回は、ビジネスで広く受け入れられている「メール」と、その後継になりそうな勢いの「ビジネスチャット」の特徴を分析します。その上で、ビジネスチャットをただ「入れただけ」では、有効に機能しそうにないポイントを列挙してみます。
メールは、電話を含む直接的な対話と比べて、ビジネスにマッチした特性を備えています。いくつかありますが、大きなポイントは以下の2点であると思います。
・コミュニケーションの内容が文章として残る
・やりとりが非同期であるため、時間的空間的拘束を排除できる
一点目は、コミュニケーションの内容が、関係者が共有する形で残るという点です。これにより、対面の会議の際の議事録の役目を果たし、決定したことや、そこに至るプロセスが明確になります。ビジネスの場では、非常に重要なポイントです。さらに、Gmailのような検索性に優れたメールシステムの活用により、より高いメリットを享受できます。
二点目は、情報のやり取りの際に相手を拘束しないという点です。メールを書いている時も、読んでいる時も、相手は時間的、空間的に拘束されません。直接対話の場合は、同一時間に同一の場所にいる必要があります。電話は、離れた場所でも良いですが、時間的には拘束されます。ビジネスシーンでは、限られた時間の中で最大の成果をあげることが求められますが、会議等があれば、移動等も含めると、数時間特定の案件だけに、人的リソースがロックされることになります。非同期のやり取りであれば、都合が良い時に情報の発信と受信が出来ます。こま切れの時間でも、移動中でも、相手の都合を気にせずに、情報のやり取りができるのは、効率が良いと言えます。
このような利点から、ビジネスの場では、広くメールが活用され、様々なコミュニケーションの中心となっています。
・メールの文章の言葉が足りていないため、誤解が生まれている。そして、やり取りのテンポが遅いために、その状況がなかなか解消しない。
・対象とする問題が複雑で、メールの本文が長大なものとなり、読むのも、返答するのも苦労する。
このようなケースでは、メールという手段にこだわらず、直接対話した方が良いでしょう。全てのビジネスマンが簡潔で要点をおさえた文章をかけるわけではありません。やり取りしたい内容をよく考えて、適切なコミュニケーションを取る必要があるようです。また、反対に、
・メールでの通知で十分であったり、話す内容も多くないのに、会議の時間が設定されて、時間が無駄になる。
・事前に議題の周知もなく、会議が始まってから、全くのゼロから議論を開始することになり、情報が足りず、議論が煮詰まらない。
このようなケースでは、メールを活用するべきでしょう。「それ、メールの通知だけで良いですよね?」というような会議は日常的に経験されているのではないでしょうか。または、直接対話することを前提としていても、そこに至る前にメールで情報が周知されていれば、より有意義な対話が可能になるものです。
しかし、なるべく早く結論を出す必要があり、かつ内容があまり明確になっていない場合などには、直接対話とメールの間にあるようなツールが必要ではないでしょうか。
直接対話の特徴
・内容が文章として残らない。
・同期コミュニケーションのため、参加者全員の時間を拘束する。
・やりとりは、リアルタイムで、テンポが早い。
メールの特徴
・文章が残る。
・非同期コミュニケーションにより、相手を拘束しない。
・文章が比較的長め。
・やりとりのテンポが遅い。
チャットの特徴
・文章が残る。
・非同期コミュニケーションにより、相手を拘束しない。
・文章が短い。
・やりとりのテンポがメールよりも早い。
チャットは、内容も残るし、テンポが早く、相手もロックしないという、ビジネスに有利なポイントを備えていて、構造的には非常に優秀なツールのようです。
・メールでのやりとりが確立している環境では、利用率が上がりにくく、一部の人だけが利用するにとどまる場合がある。そのため重要な情報がどちらか一方だけに配信される。これを防ぐために、双方に情報配信するものの、隔絶された場でそれぞれ議論が進むため、結果的に合意形成されることはなく、情報伝達や議論の目的が達成されない。
・チャットを利用していても、返信が遅い、あるいは返信しない人がいる。慣れていないためか、あるいは、いつも見える環境にいないのか、チャットアプリ自体にたまにしかログインしないためと考えられる。重要な情報を握っていたり、決定権を持っている人が遅いと全体のテンポを下げて、チャットの利点が失われる。
・オンラインの人だけで話がすすみ、結論に至るが、それまでオフラインだった人が最後に登場して、結論が覆るようなことがある。議論するべき内容のステークホルダー全てがオンラインでない場合には、結論を出しにくい。つまり、やりとりのテンポを維持するためには、オンラインであることを強いることになる。参加者を拘束しているとも言える。
・職種によって、オンラインでいるかどうか、投稿できるかどうかという点で差があり、やりとりのテンポが異なる。テンポが異なると、一番遅い人に合わせることになり、チャットの利点が損なわれる。
以上のような問題は、チャットを導入した多くの環境で感じられることと思いますし、他にも、環境特有のものも含めて、多く出てくるでしょう。「入れただけで解決」とはいかないようです。そう甘くはありません。
次回は、ここで上げた問題点を解決する秘訣を探ります。
現在のビジネスのやり取りの王道は「メール」
ビジネスの現場で利用される コミュニケーションの方法は、その時代によって様々に変わってきました。インターネットが一般に普及する前は、電話や対面での「会話」が主流でした。その後、インターネットが普及し、多くのビジネスパーソンが自分のメールアドレスを持つようになってからは、「メール」が主流になったと言えるでしょう。最終的には、対面での会話でビジネスを成立させることになりますが、そこに至るプロセスの多くで、メールが使われます。メールは、電話を含む直接的な対話と比べて、ビジネスにマッチした特性を備えています。いくつかありますが、大きなポイントは以下の2点であると思います。
・コミュニケーションの内容が文章として残る
・やりとりが非同期であるため、時間的空間的拘束を排除できる
一点目は、コミュニケーションの内容が、関係者が共有する形で残るという点です。これにより、対面の会議の際の議事録の役目を果たし、決定したことや、そこに至るプロセスが明確になります。ビジネスの場では、非常に重要なポイントです。さらに、Gmailのような検索性に優れたメールシステムの活用により、より高いメリットを享受できます。
二点目は、情報のやり取りの際に相手を拘束しないという点です。メールを書いている時も、読んでいる時も、相手は時間的、空間的に拘束されません。直接対話の場合は、同一時間に同一の場所にいる必要があります。電話は、離れた場所でも良いですが、時間的には拘束されます。ビジネスシーンでは、限られた時間の中で最大の成果をあげることが求められますが、会議等があれば、移動等も含めると、数時間特定の案件だけに、人的リソースがロックされることになります。非同期のやり取りであれば、都合が良い時に情報の発信と受信が出来ます。こま切れの時間でも、移動中でも、相手の都合を気にせずに、情報のやり取りができるのは、効率が良いと言えます。
このような利点から、ビジネスの場では、広くメールが活用され、様々なコミュニケーションの中心となっています。
直接対話とメールの間
前項で述べた特徴が広く受け入れられ、メールは、ほぼ全てのビジネスの現場で活用されています。ただ、以下のような、不都合を感じたことはないでしょうか。・メールの文章の言葉が足りていないため、誤解が生まれている。そして、やり取りのテンポが遅いために、その状況がなかなか解消しない。
・対象とする問題が複雑で、メールの本文が長大なものとなり、読むのも、返答するのも苦労する。
このようなケースでは、メールという手段にこだわらず、直接対話した方が良いでしょう。全てのビジネスマンが簡潔で要点をおさえた文章をかけるわけではありません。やり取りしたい内容をよく考えて、適切なコミュニケーションを取る必要があるようです。また、反対に、
・メールでの通知で十分であったり、話す内容も多くないのに、会議の時間が設定されて、時間が無駄になる。
・事前に議題の周知もなく、会議が始まってから、全くのゼロから議論を開始することになり、情報が足りず、議論が煮詰まらない。
このようなケースでは、メールを活用するべきでしょう。「それ、メールの通知だけで良いですよね?」というような会議は日常的に経験されているのではないでしょうか。または、直接対話することを前提としていても、そこに至る前にメールで情報が周知されていれば、より有意義な対話が可能になるものです。
しかし、なるべく早く結論を出す必要があり、かつ内容があまり明確になっていない場合などには、直接対話とメールの間にあるようなツールが必要ではないでしょうか。
ビジネスチャット登場
ビジネスチャットは、前述したような「直接対話とメールの間」のようなツールと捉えることができます。直接対話とメール、チャットの特徴をあげて比較してみましょう。それぞれ様々な特徴がありますが、比較しやすいような項目をあげています。直接対話の特徴
・内容が文章として残らない。
・同期コミュニケーションのため、参加者全員の時間を拘束する。
・やりとりは、リアルタイムで、テンポが早い。
メールの特徴
・文章が残る。
・非同期コミュニケーションにより、相手を拘束しない。
・文章が比較的長め。
・やりとりのテンポが遅い。
チャットの特徴
・文章が残る。
・非同期コミュニケーションにより、相手を拘束しない。
・文章が短い。
・やりとりのテンポがメールよりも早い。
チャットは、内容も残るし、テンポが早く、相手もロックしないという、ビジネスに有利なポイントを備えていて、構造的には非常に優秀なツールのようです。
ビジネスチャットを使うことでコミュニケーション問題は即座に解決するのか?
では、ビジネスチャットを導入することで、コミュニケーションがより効率的に、活発になり、ビジネスが加速するのかというと、そう簡単ではないようです。以下にビジネスチャットの「うまくない点」について思いつく限り、挙げてみます。・メールでのやりとりが確立している環境では、利用率が上がりにくく、一部の人だけが利用するにとどまる場合がある。そのため重要な情報がどちらか一方だけに配信される。これを防ぐために、双方に情報配信するものの、隔絶された場でそれぞれ議論が進むため、結果的に合意形成されることはなく、情報伝達や議論の目的が達成されない。
・チャットを利用していても、返信が遅い、あるいは返信しない人がいる。慣れていないためか、あるいは、いつも見える環境にいないのか、チャットアプリ自体にたまにしかログインしないためと考えられる。重要な情報を握っていたり、決定権を持っている人が遅いと全体のテンポを下げて、チャットの利点が失われる。
・オンラインの人だけで話がすすみ、結論に至るが、それまでオフラインだった人が最後に登場して、結論が覆るようなことがある。議論するべき内容のステークホルダー全てがオンラインでない場合には、結論を出しにくい。つまり、やりとりのテンポを維持するためには、オンラインであることを強いることになる。参加者を拘束しているとも言える。
・職種によって、オンラインでいるかどうか、投稿できるかどうかという点で差があり、やりとりのテンポが異なる。テンポが異なると、一番遅い人に合わせることになり、チャットの利点が損なわれる。
以上のような問題は、チャットを導入した多くの環境で感じられることと思いますし、他にも、環境特有のものも含めて、多く出てくるでしょう。「入れただけで解決」とはいかないようです。そう甘くはありません。
次回は、ここで上げた問題点を解決する秘訣を探ります。